思い出すこと

先日、ある若者と話しているときになぜか2000年問題の話になりました。何それ?と思われる方もあるかもしれませんが、1999年から2000年に変わるときにコンピューターに内臓されているカレンダーがどうにかなって世界中のコンピューターシステムが狂ってどうのこうの、というあれです。あのときには2000年になった途端に世界が崩壊するというような極端な話さえ出ていて、しかし実際には別になんてことなく暦が変わって、何だったんだ、そんな馬鹿なことを言ってた奴は誰だ、というようなことになって、2000年問題を深刻に語っていた人は馬鹿の代表みたいな扱いを受けていました。

私はその頃ちょうどコンピューター業界にいて、カナダでも代表的な会社だったのでその会社や他の関連会社のエンジニアの人たちとの付き合いもあり、時限爆弾のようなその2000年1月1日午前0時に何が何でも間に合わせなければと、彼らが寝る時間さえ削って、当然週末の休みもろくに取らずに、草の根を分けるようにしてありとあらゆるコンピューターを整備する様子を見ていました。正当な休日であるはずの土曜日に出勤しないと上司に怒鳴られる、というのも当たり前だったのです。北米というのはたぶんコンピューターが世界中で一番先に一番たくさん普及したところだと思うので、古いものも多かったのでしょう。

実際に2000年が来てみると、システムがおかしくなった会社は北米全体でほんの数社だったと思います。確か、何かの流通関係の会社が影響を受けてましたが、ごく少数だったので世界的な大問題になることもありませんでしたし、第三世界などにはあまりコンピューターそのものが普及していなかった、問題が判明した後で作られた対応済みのコンピューターが多かった、という事情もあります。今となっては「何それ?」で済んでしまう忘れられた過去の出来事ではありますが、それを影で支えた無数のエンジニアたちの知られざる努力というのはやっぱり誰かが知っていなければならないと思うし、「大変なことになるぞ!」と言って笑われた人の名誉も少なくとも私は尊重したいと思います。人間の文明はずいぶん進んでいますが、ひどく脆い綱渡りのような側面もいつだって秘めているのです。

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by ammolitering6 | 2016-12-23 14:14 | Comments(0)

写真サイト3個目です。


by ammolitering6