カルチャークロール倉庫スタジオ

こうして地図にしてみると、バンクーバーは京都みたいだなと思います。将棋や碁はできませんが、オセロくらいならできるかな。やや変則的になるかもしれませんけれど。この地図には番号が振ってありますが、これは毎年11月に行われるバンクーバー東部地区アートツアー「カルチャークロール」の地図で、番号は参加スタジオを示しています。これだけ見るとスタジオは50軒くらいかなという気がします。つまり参加アーティストも50人くらいかな、と思いますが、さにあらず。スタジオの規模は物置みたいに小さいのから巨大な倉庫まであり、中でも一番大きな倉庫スタジオには小さなスタジオが数百軒詰まっています。すべてのスタジオをゆっくり丁寧に見て回ろうとすると何日かかるか分からないので、私はここ数年は一番大きな倉庫スタジオだけを見て回っていました。

でも、そこで目にするアート作品はどうも今ひとつ私にとっては精彩に欠けるものが多く、今年はもういいかなと思っていました。ところが昨日の夜、急にゆかさんからお誘いいただいて、やっぱり今年も出かけることにしたのでした。ゆかさんは昨日も一人で出かけて少し見て回り、今年の展示は去年よりレベルが高いという印象を受けたのだそうです。そうと聞いて期待していたら、ゆかさんのお眼鏡に狂いはなく、ほんとに急にいきいきした感じの展示になっていました。ゆかさん、さすがです。それから、今年は行けなかったSさん、残念でしたね。これは、と思った数人のアーティストをご紹介しますので、ぜひご覧ください。
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この建物はもともと何かの倉庫だったのですが、何の倉庫だったのかは分かりません。貨物列車専用の線路の横にあって、脇から見ると第二次世界大戦の頃からそのまんまなんじゃないかと思うような雰囲気があります。4階建てで、中にはむき出しの恐ろしげな業務用エレベーターがあるし、入ったら出られないような迷路のような作り、夜に一人でいたら絶対に幽霊が忍び寄ってくれそうな気配など、アーティストのための舞台装置は完璧です。
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通路に鏡を置いてこんな人形を置くのはやめてほしい、と思います。今日は雨が強かったので、5時頃に行ったときにはお客さんはほとんど入っていなくて、さみしいほどでした。でも、ゆっくりと見て回って帰る頃にはかなり混雑していました。
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アートもいいですが、仕事が終わってそのまま行ったので、気になるのはスタジオに置いてあるおやつのほうです。オープニングは昨日だったのでそれほど豪勢な軽食が出ていたわけではないのですが、それでもやっぱり気になります。ポテトチップスとか安いチョコレートとか飴玉とか、たいていはそんなのが形だけ置いてあるだけです。でも、ところどころもっと豪華なのが用意されているところもありました。アートよりおやつのほうが魅力的なスタジオもありました。
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お菓子の取り合わせ。アフターエイトという平べったくて四角いミントチョコレートがおいしかったです。その昔、これがとてもおしゃれに感じて大事に食べていたことを思い出します。
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生のブロッコリーを出しているスタジオがありました。
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おお、ここは豪勢ですね。
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しかしこっちはもっと立派です。サンドイッチもあるのです。何しにいったのだね、とお思いになるかもしれませんが、、、
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腹が減っては芸術鑑賞はできず、アートよりもわんこのほうが可愛いのですから仕方ありません。あるアーティストの飼い犬であるようでした。
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通路に自動販売機がありました。何を売っているのかと思えば、、、
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ここで創作活動をしているアーティストたちのカードなのでした。クリスマスが近づいて、カードの需要もどっと増えます。これは買うとけっこう高くて一枚5ドルやそれ以上、下手すると10ドル前後というとんでもない値段がついていたりします。なんでそんなものにそんなお金をつけるのか、そしてそれを軽く買っていく人たちがたくさんいるのか、私には理解しかねます、ほんと。私も名画を描いてカードを売ろうかなあ、と思います。
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さて、それではようやくアートにも目を向けましょう。いきなりの真打ち登場、デイビッド・チョウさんです。韓国系カナダ人の彼は文句なしに抜きん出ています。倉庫スタジオの中には絵を描いているアーティストも大勢いますが、具象絵画としては彼の技量にかなう人はいないし、ライバルになりそうなレベルの人もいません。もちろん、単に写真みたいにそっくりに描くというだけならチョウさんよりもっと本物っぽく描ける人もいますが、彼のは作品の生命力が圧倒的に強いのです。細部をよく見るとタッチは決して細かくなく、むしろ荒っぽいくらいなのに、できあがった力強い絵から不思議なほどの繊細さが伝わってきます。

最初に彼の作品を見たのは5年ほど前ではないかと思います。大型の絵が多く、ボクサーと犬を好んでそればっかり描いている印象がありました。私は別にボクサーには興味はなく、それが数年続いたのでちょっと飽きた気持ちもあったのですが、今年は澄んだ冷たい空気が感じられるような雪山など新しいテーマが加わっていて、やっぱりこの人はすごいと改めて感じました。まだ年若いアーティストなので、これからもきっといろいろと挑戦して世界を広げていくと思います。お金と展示スペースがあれば雪山の作品を買いたいと思うほどです。ボクサーのは、、、他に譲ります。デイビッド・チョウさん、私のでよければ太鼓判つきの逸材です。ウェブサイトはこちらですが、あいにく山の絵はないようです。
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こちらはアーリー・ウッドさんという半分日本人のアーティストです。全くの抽象画ですが、実は自分で撮った風景写真を基にしているそうです。色合いがとてもきれいな作品が多いです。優しく柔らかいだけでなく動きがあり、薄い色合いなのに深みが感じられる素敵な絵です。
ウェブサイトはこちらです。
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こちらはリアン・マクラレン・ヴァーナムさん。額縁代わりに窓枠を使ってあって、ずっしりした感じの色合いは最初ガラス絵かと思いました。窓枠がよく似合う絵柄で、古い木を使った壁にかけてあったら絵がもっともっと引き立つだろうなと思います。絵柄そのものは空想的で軽いのに、なかなか思い出せない夢のような重さが感じられるところもいいです。絵本になっていてもいいだろうし、家にこういう絵があると子供はいろいろと空想しがちな子に育つだろうなと思ったりします。
ウェブサイトはこちらです。
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イスラエル人の画家シェヴィー・レヴィーさん。一応具象なのに抽象に食い込んでいる色合いが素敵で見入ってしまいます。白樺の幹の部分はヘブライ語の数学の本を破ってコラージュとして使ってあり、面白い効果を出しています。シャガールを思わせるような夢のような肌合いです。他にも赤の習作シリーズなどもあり、どこがどうとは言えないけど感じが良い作品群でした。
ウェブサイトはこちらです。
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こちらは日本にも行ったことのあるというアーティスト。都会の光と線を音が聞こえそうなほどに描き出しています。他にもいろいろ大胆な色使いと筆遣いのシンプルな抽象画をいろいろ描いていらっしゃるようです。ただ、静かな夜の遠くの賑わいを思わせるからか、ざわざわしたカルチャークロールの雰囲気の中で見るような絵ではないなという印象でした。もっと広々した静かなところが似合う絵なのです。ここの展示では、壁の白がつまらないなと思います。黒に近い灰色か、もしくは赤や青のほうがいいような気がします。
ウェブサイトはこちらです。
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他には、ゆかさんの絵の先生の作品も複雑な多色使いが上品にまとまっていて好感が持てました。写真をお願いし損ねたのが残念です。また、壁にかけるのではなく床に置いて上から見たほうが数段良いと思えるようなタイル絵を描いている人もいたし、どうみても壁に穴やくぼみができているようにしか見えない絵を描いている人もいました。どちらもそれなりに印象深い作品群でした。

日系三世のカツミ・キモトというアーティストの作品もうっかり買ってしまいそうなほど素敵でした。キモトさんのはいろんな色をマーブル状にして複雑な模様を作ってあるもので、特に青の作品が秀逸でした。じーっと見ていると私は細かい細部に風景を見て絵の中に入りそうな気分になりますが、ゆかさんは「あ、ここの4本はシマウマの脚だ、こっちのこれはインディアンの酋長の顔だ」というふうに、全く別の見方をしています。ロールシャッハテストにも使えて1500ドルという値段はお得なのかもしれません。うっかり買おうとしても財布が許してくれないというのはありがたい事実です。
こちらがその作品です。

今回はこうして玉石混合の中でも大小の玉がけっこうたくさん混じっていたので良かったです。他のアーティストたちも、それぞれの分野では極めて高い水準にある人たちはたくさんいると思います。家具や工芸品など私には良し悪しがよく分からない分野のアーティストも大勢いるのです。絵に関しては、かなりはっきりと下手の横好きの人たちもいました。ゆかさんと私は「これくらいだったら私たちでも何とかなるんじゃない?スタジオ借りてアーティストになろうか?」などと話し合ってしまったほどでしたので、そういう意味でも意義深いアート探索でした。。。最近は日が短いので5時頃来たときも既にかなり薄暗かったのですが、うろうろと歩き回って8時半頃に外に出るとすっかり暗くなっていました。
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建物の外にはフードトラックが何台も止まっていました。年々盛んになっているカルチャークロール、実は明日もまた行くことになりました。また続きをお楽しみに。
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by ammolitering6 | 2014-11-22 17:22 | Comments(0)

写真サイト3個目です。


by ammolitering6