砦の町フォートランリー
2014年 10月 05日
それではさっそく観光に参りましょう。まずは墓地。日本のお墓とは全く雰囲気が違います。
お墓のお隣は当然のように教会です。教会の駐車場にテントが並んでいるので覗いてみたら、、、
ここでも青空市場をやってるのでした。
あんまり大きくはありません。この前近所の市場で見かけた人もお店を出していました。方々の市場を巡っているのでしょう。この市場は土地柄を反映してか手作りのクラフトを売るお店が多かったです。カナダの田舎の村は、どういうわけかどこもかしこも「アートの町です!」というのを売り物にしています。アーティストにとっては田舎のほうが向いているということなのでしょうか。
教会の案内板を見ると、礼拝、瞑想、アートなどと並んで無心論者(懐疑主義者)、ケイリー、という言葉も見えます。うーむ、無神論者いらっしゃい、と誘う教会か。。。よほどのつわものが待ち構えているに違いありません。バトルの様子を見てみたい気もします。ケイリーというのはスコットランドやアイルランドなどのケルト風のダンスパーティーを指すのだそうです。
とりあえず町全体を見てみよう、と思って小さな中心地を通り抜け、線路と川を渡って突き当たりまで行ってみました。大きな川に中州があって、線路を越えて橋を渡ると中州の反対側まで道が続いているのです。この中州は半分が公立公園になっていて、キャンプ場などもあります。もう半分は原住民の居住地です。
クァントルン族の土地です、ファーストネイションです、と書いてあります。原住民の呼称は様々ですが、カナダでは現行ではファーストネイションというのが主流であるように見えます。
さて、それでは中心地のほうに戻りましょう。200年ほどの歴史のある古い町ですが若い人たちにも人気があり、川沿いには新しい住宅がたくさん作られています。子供がたくさんいて、ニュータウン、という言葉が浮かびます。これから何十年かするとここも老人ばかりになるのでしょうか。それとも移民ばかりになるのか、うまいことカナダらしさと健全な人口比率を保てるのか、どうなるかなと思います。
住宅前の植え込みにキノコ発見!インクキャップの頭のところが土から出てきています。今取ってバター焼きにしたらすごくおいしいはずです。
線路を越えると中心地です。ここは貨物列車が一日に数便通ります。
線路脇には秋の菜の花。やっぱり菜の花は春に咲いていて欲しい、というのは私の都合に過ぎないようです。
線路の向こうには駅があります。行ってみましょう。
駅の前の線路を散歩している親子がいます。やめろ!危ない!と言いそうになりますが、実はこの駅は今は使われていなくて鉄道資料館になっていて、実際に使われている線路と平行して飾り用の本物の線路が駅の前に置いてあるのです。
駅の裏には昔使われていた本物の列車が置いてあります。
駅舎に入ってみましょう。待合室には古いストーブと古いトランクがあります。他にも古いものがいろいろありますが、やっぱり古い町なので古い物には全く不自由してないものと見えます。
ボランティアで案内係をしているこの方は私の古くからのお友達、Dさんです。数えてみると18年になっている。。。恐ろしいことです。この調子で行くと私ももうすぐ第二次世界大戦の思い出話をし始めるかもしれません。ともあれ、彼女のお父さんはこの駅の最後の駅長さんを務めた方で、彼女も子供の頃に実際にここに住んでいました。2階が住居になっているのです。彼女の記憶力はものすごくて、歩く郷土史年鑑のような人です。こういう歴史資料館の案内係にはうってつけの人物なのです。
駅長室には古いタイプライターがありました。私もその昔これでタイプを練習して、しかしタイプの試験には落ちたのでした。いまだにあんまり上手じゃなくて、よくよく不器用だなと思います。
モールス信号を出す機械。今でもちゃんと使えるのだそうです。
アルファベットの対応表。覚えておくといつか何かで役に立つかな。
古い消火器。これはさすがに使えません。Dさんに昨日の火事の話をしたら、やっぱり「完成直前の火事って多いのよね」とおっしゃってました。そのすべてが怨念や保険がらみの放火とは限らず、工事で使うバーナーが原因だったりすることもあるそうです。
フォートランレーは古いものをできるだけそのままにたくさん保存しているのでロマンチックな雰囲気があり、映画の撮影にもしょっちゅう使われます。この駅は結婚式の写真撮影にも人気だ、という話を聞いていたら、さっそく一組発見!たしかに舞台装置としては最高だろうなと思います。
では町のほうに行ってみましょう。これは新しくできたスーパーです。もともとはこのお隣にあったフランチャイズのスーパーだったのですが、数年前に火事ができてしまったので、この場所に新しく作られました。オーナーは中国人のリーさんという人で、人望があるという評判は前にも聞いたことがあったのですが、町のことをいろいろ説明してくれていたDさんもさっそくリーさんを称え始めました。「あの火事のあと、リーさんは町民の声を聞く会を開いて、どんな店にしてほしいか、何を売ってほしいかって聞いたのよ。そしてそのリクエストはほとんどが実現したの。地元の生産者の商品を売れるようにフランチャイズからも撤退して、独立系のスーパーになって、今では品揃えも雰囲気も本当に素敵よ!」と手放しで絶賛するので、それなら、と思ってさっそく見て回りました。そしたら、気の良さそうなリーさんがお店の奥のほうで自ら忙しく朗らかに働いていたし、地元の物も多いみたいだしカフェのコーナーでくつろぐ人も多いし、電動車いすで入ってきて動き回るお客さんにも便利な作りになっていたし、確かにいいお店だなと思いました。お値段のほうはほとんど競争がないだけあってかなり高めでしたけれど。
ひるがえってそのお隣、かつてリーさんのお店があった場所とその周辺を買い取って工事が行われているこちらは、Dさんが「あのいまいましい連中」と顔をしかめる現場です。どこの業者のプロジェクトか分かりませんが、フォートランレーには古い町としての景観や雰囲気を残すために高さその他の自主規制があるのに、歴史的建造物保存協会からの再三の申し入れにも関わらず、3階建てのモダンな建物を強行で建てようとしているのだそうです。LEED(米国グリーン建築基準)のゴールドを取ってて、サステイナブルですよ、と謳ってありますが、観光一本で売っている小さな町(人口およそ3400人)の地元の人たちを怒らせているようでは完成前に焼け落ちても知りませんよ、ほんとに、と思います。まあ、そんなことにならないで早い時点で平和的に解決することを願うばかりです。
さっき着いたばかりなのにさっそく休憩、ということでカフェに入ったら、インテリアの飾りとして懐かしい古い電話が置いてありました。
古いラジオもあります。よくよく古いものが好きな町なのです。